VMDとは(visual merchandising)の略で、マーチャンダイジング(MD)を視覚的(V)に行っていくということを表します。VMDの基本から応用事例を交え、魅力的な売り場作りにつながる用語、いくつかピックアップしながらご紹介します。
プランティングとは
ブランディングとは?
VMDとディスプレイ
「ディスプレイ」と「VMD」の違いとは?
AIDMA(アイドマ)の法則
知っておきたい「消費者の購買心理」AIDMAの法則
動線長
あまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、簡単に言いますと「滞店時間」です。滞在時間の長さ≒売上というと別の課題もありますが、やはりまずは長くいてもらうことが購入動機につながります。
『左回りの法則』+『レイアウト』
「左回りの法則」とよばれ、人が自然に動くときに通る経路は「左回りが良い」反時計回りといわれています。
『動線』+『動長線』
『動線』とは、お店の中を人が自然に動く時に通ると思われる経路を線で表したもの。お店をデザイン・店舗設計する上でとても重要である動線です。この動線計画次第で、お店の売上や集客は大きく左右されます。
『ストアアイデンティティ』 + 『売り場』
ストアアイデンティティとは、一言で表現するとお店の個性や "らしさ"です。
陳列のテクニック
VMDとは(visual merchandising)の略で、マーチャンダイジング(MD)を視覚的(V)に行っていくということを表します。VMDの基本から応用事例を交え、魅力的な売り場作りにつながる用語、いくつかピックアップしながらご紹介します。
前進立体陳列
前進立体陳列とは
前出し陳列、フェイスアップ陳列とも呼ばれる前進立体陳列とは、手前の商品が売れると後ろに控えていた商品を引き出すことで棚の空いたスペースを常に埋めておく陳列方法です。
コンビニやドラッグストア、スーパーなど商品量が多く、食材や日用品といった馴染みのある商品を扱う店舗でよく使われています。
前進立体陳列のメリット
売り場の前面を商品で埋めることで、商品が無限にあるような品揃えの豊富さや、在庫切れしない安心感と店舗力をアピールすることができます。
逆に商品棚に空きがあると、お客さんは「たくさん売れているお店」と考えるよりも「必要充分な量の商品を確保することができないお店」としてマイナスイメージを持ってしまうので注意が必要です。
前進立体陳列に向いている商品
前進立体陳列に最も向いているのは「ついつい買ってしまう」ような低価格かつ馴染みがあり、衝動買いを誘発できるような商品です。
逆に向いていない商品としては、配置変えるために常に動かす必要が出てくるため、壊れやすい商品や高級品は避けた方が無難でしょう。また豊富に在庫がある安心感を訴求する方法であるため、「レア感」を押し出すようなシーズンモノの商品には向いていません。
前進立体陳列のポイント
また前進立体陳列のメリットを活かすためには、商品が売れる度に棚の後ろから商品を引き出す作業が必要となります。とはいえ営業中の店舗で毎回調整をしていくのは難しいでしょう。
そこでコンビニでよく見かける傾斜のついた棚板を利用するして、なるべく人を使わずに後ろにある商品が勝手に前面にでてくるような工夫が必要です。
人の手で行う場合も、担当を決めたり、商品棚を調整する時間帯を決めたシフトを作成するなどして、半自動的に整理整頓されていく仕組みづくりを心掛けましょう。
ボリューム陳列
ボリューム陳列とは
ボリューム陳列とは単品大量陳列とも呼ばれ、同じ商品で売り場の一部分を埋め尽くす陳列方法です。壁面いっぱいに単一の商品が並べられることもあれば、山型の什器などを用いて高く積んでいくこともあります。
スーパーやホームセンターなど商品量が豊富で、一押しの商品が頻繁に変わる店舗でよく使われています。
ボリューム陳列のメリット
ボリューム陳列のメリットは2つあります。一つ目は迫力があるためお客さんの視線を集めるアイキャッチになり、集客効果を高めることができること。もう一つは手に取りやすくなるため、購入までのハードルが下がるというものです。
また色やラベルが同じ商品がズラッーと並んでいる様子は見た目的にも美しく、売り場のアクセントとしても有効に働きます。
ボリューム陳列に向いている商品
そのときにお得な商品や色鮮やかな商品など、そのとき最も注目してほしいもの、もしくは集めて置いたときに見た目が美しいものをピックアップして陳列するようにしましょう。
高さを出すため、安定感のない商品は避けるべきです。ボリューム陳列は安定感が悪いとお客さんは崩落の危険性を感じ、近寄らなくてなってしまいます。
ボリューム陳列のポイント
毎日同じ商品で、同じような見せ方をしていたらボリューム陳列の効果は半減します。SALE商品や季節の一押し商品などその時々で異なった商品を陳列することが大切です。
いつも異なる商品がボリューム陳列されることで、お客様さんにも「一押しであること」がよく伝わるため、POPで説明したり声出しで集客するよりも楽に販売数を伸ばすことができるでしょう。
展示陳列
展示陳列とは
展示陳列とは「シンボライズ陳列」や「ムードアップ陳列」とも呼ばれ、美術館の作品やファッションショーのように「少数精鋭」の注目商品を訴求するための陳列方法です。デザインや配色、照明、装飾などの細部にまでこだわり、センスのよさを感じさせる空間づくりが求められます。
百貨店やアパレル、化粧品などの客単価が比較的高く、コンセプトやブランド力が問われる店舗でよく使われている陳列方法です。
展示陳列のメリット
展示陳列のメリットは商品のよさだけでなく、空間の美しさや店舗のセンスなどを総合的にお店をアピールできることです。
また既存顧客に対しても、新たな価値を提案することで潜在的なニーズや購買意欲を引き出すことができるので、上手く行えば同じ商品を2倍、3倍の価値に魅せることも可能です。
展示陳列に向いている商品
新作や主力の戦略商品など、ターゲットとなる客層に最もマッチしているかつ、店舗のコンセプトを体現するような商品を選びましょう。
また商品自体にインパクトがあり、個性的なモノの方が商品からインスピレーションを得やすいため、テーマの設定やストーリーを作りやすくなります。
展示陳列のポイント
展示陳列はまさに「お店の顔」となるため、そこにストーリーやテーマ性、コンセプトが見て取れることが大切です。商品のカラーや世界観と統一されたショーケースや陳列什器を使用し、一貫したメッセージのある空間を作りあげましょう。
また展示陳列には「商品数に対して空間の消費量が多くなる」「陳列に手間がかかる」といったデメリットもありますが、「お客さんの手が届かない上部の空間を使う」「ボリューム陳列と併用してメリハリをつける」といった工夫で解決することができます。
圧縮陳列
圧縮陳列とは
圧縮陳列とは、狭小な空間に入るだけの商品を詰め込むことで、あえて無秩序にする陳列方法です。商品陳列は「見つけやすさ、分かりやすさ」が基礎とされている中で、それを全て無視することで非日常空間を作り出すのが特徴です。
アジアの露天市を訪れたときのようなレジャー感覚で「いかに買い物の時間を楽しんでもらうか」に重きを置いているのが他の陳列方法と最も異なる点でしょう。
圧縮陳列のメリット
圧縮陳列のメリットは「お客さんの買い物量が普段より多くなる」という点にあります。お客さんはジャングルのような店内を歩き回っているうちに、興味のある商品と出会い、ついつい買ってしまうのです。
また「小ロットで仕入れて、売り切れたら終わり」というスタンスで運営することで、お客さんにとっては行く度に違った商品との出会いがあり、リピート顧客の獲得にも繋がっています。
圧縮陳列に向いている商品
圧縮陳列は様々な商品が多種多様に置いてあることが何よりの価値となります。ブランド品とトイレットペーパーが一緒に買えるドン・キホーテのような店は世界中でもなかなかないでしょう。
さらにドン・キホーテは本部による一括仕入れの他に、各店舗それぞれが自由に使える仕入れの予算を与えることで、チェーン店舗であっても各店で異なる商品構成を実現しています。
圧縮陳列のポイント
圧縮陳列はあえて商品を探しづらくしているため、そういった店舗には「◯◯が欲しい」と決まっているお客さんは滅多に来ません。そこで「なんとなく入店した」お客さんの購買意欲をいかに刺激できるかがポイントとなります。
ドン・キホーテはたとえダンボールのままの陳列であっても、独特の親しみあるPOPで衝動買いを起こさせることに成功しています。圧縮陳列はただ商品を雑多に置くだけではなく、このような「衝動買いを誘発する仕掛け」があるかどうかが最大のポイントであると言えるでしょう。
ゴールデンライン
ゴールデンラインとは
ゴールデンラインとは、しゃがんだり、背伸びをしたりすることなく、自然な状態で無理なく商品が手に取れる高さのことを指します。身長170cmの男性の場合であれば床上70~155cm、身長160cmの女性であれば床上60~145cmくらいが目安です。
最もターゲットとなる顧客が、上は立っている人の目線のすぐ下あたりから、下は降ろした手が自然に触れることができるまでの範囲を考えるようにしましょう。
ゴールデンラインに陳列すべき商品
ゴールデンラインには当然ながら売れ筋商品や新商品、広告の品などもっとも販売圧力をかけたい商品を陳列しましょう。ただし、お客さんのニーズに合わない残り物や処分品などを販売すると、店舗自体のイメージが下がることがあるので注意が必要です。
基本的には利益率の確保できる主力商品や潜在成長商品などを配置し、店舗の魅力をアピールするのが正しい戦略だと言えます。
ゴールデンラインのポイント
ゴールデンラインや有効陳列範囲を上手く陳列できたら、次に範囲から外れたスペースの有効活用を考えましょう。基本的に下部はストックスペースとして在庫の保管に使われることがほとんどですが、低価格商品を配置している店舗もあります。
上部はお客さんの手が届かない分、「魅せる」ためのスペースとして使うことができます。店舗のロゴやPOPなどアイキャッチとなるものが飾って、遠目で見ても分かりやすい目印として機能させるのも有効です。
フェイス
フェイスとは
フェイスとは同じ商品を並べたときにつくられる陳列面のことです。例えば、Aという商品が2列で並べられている場合、フェイス数=2となります。フェイスは「顔」という意味の通り、商品ごとにその「顔」となる箇所を見つけ、その面が前面に来るように陳列することが大切です。
一般的によく売れる定番商品や売れる可能性の高い商品はこのフェイス数を多く取り、売れない商品は削減するといった調整を行います。単品大量陳列が販売効率がよいと言われるのは、「フェイス数を多くとる」=「お客さんへのアピール度が高まる」からだと言えるでしょう。
縦型陳列>>横型陳列
◯◯グッズなど同一ジャンルの異なる商品でフェイスをとるときには「横方向」ではなく、必ず「縦方向」に並ぶようにしましょう。縦型陳列であれば、お客さんは首を上下に振るだけでそのジャンルの商品を網羅することができ、一歩移動するだけで隣にある関連商品を見ることもできます。
一方、横型陳列はラインとしてのアピール力はあるのですが、お客さんは一つのジャンルの商品を網羅するのにいちいち横に移動しなければなりません。さらに陳列の棚の高さにより売上が大きく左右される点もマイナスポイントであると言えるでしょう。
フェイスのポイント
どんなに売れている商品でも3フェイス以下が基本とされています。これは売り場スペースの有効活用という点と、フェイス数を増やせば増やすほど売上が上がるわけではないからです。
一押し商品についてはフェイス数が多いとそれだけで目立つため、フェイスを広げてボリューム感を演出するのがオススメです。しかし、フェイス数をあげて効果があるのは基本的3フェイスまでと言われており、それ以上にすると逆効果が下がることが多いので注意が必要です。
逆に人気のあった商品のフェイス数を下げても売上が落ちなかった場合は「売り場をより有効に使えるようになった」と言えます。試行錯誤を繰り返しながら、適切なフェイス数を見つけていきましょう。